桶谷式母乳育児Q&A(よくあるご質問と回答)For your help

お問い合わせの多いお悩みをご紹介します。
個人個人で違うことも多くあります。
困ったことや解決できないことはお近くの相談室で来室の上、おっぱいの状態、赤ちゃんの状態、授乳の状態をみてもらい、ご相談ください。

  • 赤ちゃんに飲んでもらうのが一番の方法です。
    母乳は二つのホルモンによってつくられます。赤ちゃんが乳頭を吸うことによって、ママの脳から分泌される「プロラクチン」と「オキシトシン」です。プロラクチンの働きで母乳が作られ、オキシトシンの働きで乳腺から母乳を乳頭に押し出します。母乳の出る仕組みは、二つのホルモンの働きの繰り返しなので、赤ちゃんにできるだけ乳頭に吸い付いて刺激してもらうことが、母乳を出すのに一番大切です。また、乳房に母乳がたまらない母乳量が出ないと思いがちですが、乳房は母乳を作る場所です。母乳がたまっていると新しい母乳が作られにくくなります。できるだけ乳房を空にするように、頻回に母乳をあげることがコツです。お母さんも疲れてくるとホルモンも出にくくなります。和食中心の食事と細切れでも睡眠と休養をとるようにしましょう。

  • おしっこがちゃんと出ているようなら、母乳以外の理由も考えてみましょう。
    母乳は飲んだ量がミルクと違ってわからないので、母乳が足りないのではと思うお母さんも多いでしょう。
    母乳が飲めているかわかりやすい目安は、おしっこです。おしっこの回数が一日6回以上たっぷり出て便も1-2回しっかりと出ていれば、赤ちゃんは母乳を飲んでいると言えます。その他にも機嫌や皮膚色、活気、母乳を一日8回以上飲んでいるかなどチェックしておくといいでしょう。母乳が飲めているサインがあれば、母乳以外でも赤ちゃんの泣く理由はさまざまです。抱っこてほしい、眠たい、退屈など、泣くと「母乳が足りないのでは」とすぐに授乳やミルクを足しがちですが、飲みすぎておなかが苦しくて泣くこともあります。お母さんは徐々に泣き方を聞き分けることができるようになるでしょう。

  • 夜間も3時間以上あけないようにしましょう。
    授乳中は、オキシトシンとプロラクチンというホルモンが分泌されます。この中でも、プロラクチンは夜間のほうがよく分泌されます。夜間に飲ませることで、プロラクチン濃度が上昇し、母乳分泌が維持され乳房トラブルの予防にもつながります。赤ちゃんが何か月になったから、離乳食が始まったからという理由で夜間の授乳をなくすこと、授乳回数を減らすことはありません。赤ちゃんがぐっすり寝ているとお母さんも起きにくいと思いますが、もしミルクを眠る前に足しているようなら控えめにして、3時間で起きるサイクルを作ってみるといいでしょう。授乳中のお母さんはプロラクチンの作用によって夜間起きても短時間で深く眠れる仕組みになっています。

  • 軽く冷やして赤ちゃんによく飲んでもらいましょう。
    乳腺炎の症状は、乳房が赤く熱をもって痛みがあり、関節が痛くなって高熱が出ることがあります。赤ちゃんもいつもと違って、嫌がる場合もあります。初期の乳腺炎は風邪の症状とよく似ていることがあるため、間違えやすいですが、のど、せき、鼻水などの症状がなく乳房が痛いようなら乳腺炎の可能性が高いでしょう。
    ほとんどの乳腺炎はうっ滞性乳腺炎で、原因となっている腺のたまっている母乳を出すと、症状がよくなってきます。赤ちゃんに時間をあけず、3時間以内でいろいろな抱き方でよく飲んでもらいましょう。炎症を抑えるために、患部を凍らせない保冷剤や湿布で軽く冷やして、発熱のあるときには入浴を避けて、消化の良い和食中心のものを食べてください。温めたり、自分でもみほぐしたりすると更に炎症が広がる可能性があるため、やめましょう。


    湿布の作り方
    <じゃがいも湿布>
    ①じゃがいもは皮をむきすりおろす
    ②酢を1~2滴入れる
    ③小麦粉を入れて耳たぶより少し柔らかめにする
    ④キッチンぺーパーの上に2~3㎜厚さにのばし包む
    ⑤乳輪・乳頭を外してあてる。
    ⑥乾燥したら交換

    <キャベツ湿布>
    ①キャベツの葉っぱをよく洗う
    ②白い固い筋を取る
    ③乳輪・乳頭を外してあてる
    ④しんなりしてきたら交換

  • 乳腺炎の原因はさまざまです。乳房に母乳をためすぎないようにしましょう。
    乳腺炎は、乳頭などの傷から細菌によって感染する「細菌性乳腺炎」と、乳汁がたまって炎症を起こす「うっ滞性乳腺炎」に大きく分けられます。乳腺炎のほとんどの場合は、うっ滞性乳腺炎と言われています。
    うっ滞性乳腺炎の原因はいろいろな場合が考えられます。主に、夜間の長寝や外出などで授乳間隔の延長、高カロリー食や高脂肪食の摂り過ぎ、お母さんのストレスや疲労、赤ちゃんの飲み方、ミルクの足しすぎ、おんぶ紐やきついブラジャーなどでの圧迫も原因になります。このようにいろいろな原因によって引き起こされますが、単独の原因ではなく重なって炎症を起こすことが多いようです。
    予防する方法は、まず赤ちゃんに3時間毎によく飲んでもらいましょう。高カロリーのものは控えめに、和食中心のあっさりしたものを中心の食事がおすすめです。お母さんの抵抗力、免疫力も大切です。疲労を感じた時には、適度に休養を取ってください。

  • 赤ちゃんとお母さんが心地よいと思う授乳をしましょう
    授乳は8回以上します。余計な力が入ると腱鞘炎や腰痛、肩こりなどの原因になります。お母さんと赤ちゃんがゆったりリラックスしてあげられるようにしていくといいでしょう。

    お母さんの姿勢のポイント
    ①楽な姿勢をとります
    ②肩の力を抜きリラックスして座ります

    抱き方のポイント
    ①赤ちゃんの顔が乳房と向き合い、赤ちゃんの耳・肩・腰のラインがまっすぐになります
    ②お母さんと赤ちゃんのお腹を密着させます
    ③赤ちゃんの口とお母さんの乳頭が同じ高さにします

    含ませ方のポイント
    ①乳頭で赤ちゃんの下唇を触り、口を開けましょう
    ②大きい口を開けた時に、乳輪すべてを含むように深く含ませるようにします
    ③唇が巻き込まないように朝顔の花びらのように唇をめくりましょう

    <交差抱き>
    ①飲ませる乳房と反対の手で児の首筋から方、背中をまっすぐに支えます
    ②飲ませる乳房と同じ手で乳房を支え、児が口を大きく開けたら乳頭を含ませます
    ※月齢が浅い時期に飲ませやすい抱き方です。乳房側の手が疲れやすいので、交差抱きから横抱きに移行してもいいでしょう。

    <横抱き>
    ①赤ちゃんのお顔と体がまっすぐお母さんに向き合っているか確認します
    ②飲ませるほうの乳房と同じ側の腕で赤ちゃんを支え、反対の手で乳房を大きく持ちます。
    ③赤ちゃんを引き寄せ、口が開いたら乳頭を入れます。

    <逆抱き>
    ①クッションやひじ掛けを利用して、赤ちゃんの口とお母さんの乳頭の高さを合わせます。
    ②飲ませる方と同じ側の手で、赤ちゃんの足がお母さんの背中側に来るように抱っこします。
    ③飲ませるほうの乳房と反対側の手で乳房を支えます。
    ④赤ちゃんを引き寄せ乳頭を含ませます。

    <クッションを使用しない飲ませ方>

    ①お母さんが背筋を伸ばし楽に座ります。

    ②赤ちゃんの頭が飲ませる乳房側にくる向きでお母さんの太ももの付け根に座らせます。

    ③飲ませる乳房側と反対の手で赤ちゃんの背筋から肩、背筋をまっすぐ支えます。

    ④飲ませる乳房と同じ手で乳房を支え、赤ちゃんが口を大きく開けたら乳頭を含ませます。

    ⑤乳房を支えている手を放し、赤ちゃんの背中からおしりを抱えるように支えます。

    外出などクッションがない場合に便利です。赤ちゃんと目が合いやすく自然に飲ませやすい授乳姿勢です。お母さんが猫背になったり、赤ちゃんが顎を引いていると安定しにくく、浅飲みになりやすいので注意しましょう。月齢が小さい赤ちゃんはおしりの下にバスタオルなどを敷くと高さが合いやすいでしょう。②の手は安定していれば外しても大丈夫ですが、首が座らないときは軽く支えてあげると安定します。

  • 赤ちゃんの浅飲みが原因のことが多いです。飲み方を確認しましょう。
    乳頭の含ませ方が浅くて乳頭の先にだけ吸い付いてしまっていることや、授乳時間が長いことが原因にとして多いようです。赤ちゃんの口は乳輪がしっかり隠れるくらい深くくわれているか、朝顔のように上下唇がめくれているか確認してみましょう。赤ちゃんが上手に飲んだ時は、口をはずしたあとの乳頭がきれいな丸い形をしています。飲み終わった後、乳頭の形を見てみましょう。傷の方向を赤ちゃんの口角にもっていく抱き方で授乳すると痛みが和らぐこともあります。傷が治りにくい時には、浅飲みが続いている場合やそのほかの原因が考えられます。近くの桶谷式乳相談室へご相談ください。

  • 小さく生まれた赤ちゃんのお母さんの母乳には、その赤ちゃんが成長するために最適な栄養成分や、感染症から赤ちゃんを守るための成分がたっぷり含まれています。少量でも良いので、時間ごとに昼も夜中も搾乳して、冷凍しておきましょう。たくさん搾ろうと何時間もあけて搾乳をする方法は、刺激が少ないことから乳汁がだんだん作られなくなり、分泌が悪くなっていきます。
    搾乳は手で行うのが基本です。搾乳しやすい容器を消毒して使用します。乳頭を消毒する必要はありません。手順は以下のとおりです。

    ①手をよく洗いましょう。
    ②乳頭から2~3cm離れた場所(乳輪と乳腺体の境目くらいの位置)に親指と人差し指をあてます(イラスト①)。
    ③指で乳輪を外に開くように押し、親指と人差し指の腹をリズミカルに打ち合わせていきます(イラスト②)。
    ④③をいろいろな方向から行って搾乳しましょう。
    ⑤左右交互に搾乳しましょう。乳汁の出が少なくなってきたら反対の乳房を搾乳します。

    搾った母乳は市販されている母乳パックへ移して冷凍します。赤ちゃんが1回に飲む量を小分けして母乳パックに入れるとよいでしょう。
    冷凍母乳を運搬する場合は、断熱保冷シートか発砲スチロール箱に入れて大切に持っていきます。
    保存期間は、冷蔵保存(4度以下)で8日未満、冷凍(-20度以下)では、12か月できると言われていますが、保存状態や運搬時の気温の変化や月齢に有った母乳成分母乳の味も考慮すると早めに飲ませたほうがいいでしょう。

  • おっぱいが大好きだと、主食がおっぱいで副食が離乳食というペースでいく子もよく見聞きします。赤ちゃんはもともと、自分には何が必要で、どれだけ食べればよいのかが分かる能力、生き物としての調節本能を持っています。ですから、たくさん離乳食を食べさせるために、母乳を減らす必要はありません。
    赤ちゃんは楽しく、美味しそうに食事をしている家族の様子を見ることで、食欲が刺激されます。その時期には早い遅いはありますが、必ずよく食べる日がやってきます。また、はいはいやつかまり立ちと運動機能がどんどん発達してくると食欲が出てきて食べ出すお子さんもいます。
    ただ、食べないからといってあげないのはいけません。無理強いすることのないように見守りながら時期がくるまで、根気よく続けてください。
    また、赤ちゃんが離乳食に飽きてきている場合には、少々塩味にしてみたり、和風味にしてみたりと、味に変化を持たせてみてください。味付けのない食事は食べないこともあります。その子自身の食べたい意欲が出てくるよう手づかみ食べをさせてみたり、かたさを調節したりして、かむことが楽しくなるように工夫することもよいでしょう。

  • 離乳食を開始しても、母乳はいままでどおりに与えてください。授乳回数が減ったり、夜間授乳をやめてしまうと、乳腺炎や乳房のトラブルの原因になることもあります。
    赤ちゃんの最初の半年は母乳が主食です。離乳食を食べたあとは、必ず母乳を飲ませましょう。母乳には、赤ちゃんの消化を助ける消化酵素が含まれているので、母乳を飲ませることによって消化吸収がスムーズになります。

  • 現在ではさまざまな研究から、授乳中でも安心して使用できる薬が増えています。医師や薬剤師に「母乳育児中です。」と相談して、安全性の高い薬を選んでもらいましょう。
    薬を飲むタイミングは、授乳の直後や赤ちゃんの睡眠の前が薬の影響が少ないと言われています。薬は母乳から微量しか分泌されませんが、薬を飲んでいるときは赤ちゃんの様子もよく観察してください。いつもより便がゆるい、湿疹、眠りがち、吐くなどの症状がみられた場合は小児科医に相談しましょう。
    しかし中には、投薬治療の影響を考慮し、一時的にどうしても母乳を飲ませてはいけないケースもあります。その時は母乳をやめるのではなく、3時間おきに搾乳をして乳腺炎を予防し、母乳の出が悪くならないようにしておきます。

    授乳と薬のご相談https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/jyunyu.htmlを利用するのもいいでしょう。

  • コーヒーや紅茶は1日に1~2杯程度にとどめましょう。お母さんが飲んだり食べたりしたカフェインは少量ですが母乳にも分泌されるので、あまり多くのカフェインを摂りすぎると赤ちゃんがぐずったり、寝つきが悪かったりする例もあります。
    桶谷式母乳育児相談室では、カフェインレスのたんぽぽコーヒーを紹介しています。たんぽぽの根を煎じたもので、色もほどよく苦味もコーヒーに近いものです。
    香辛料も同様に母乳に影響が出た例もありますから、赤ちゃんの様子をよく見ながら食べるようにしましょう。カレーを食べたあとの母乳を赤ちゃんが飲まなくなった、とうがらしの入った料理を食べたあとの授乳で赤ちゃんが激しく泣いた、という報告があります。
    しかし、カレーを常食するインドや、トウガラシをよく食べる韓国の赤ちゃんにみられないのは、その土地の風土に合った食文化が根付いているからでしょう。
    赤ちゃんの胃腸は未発達ですから、日本で昔から食べられていないもので刺激が強い食べ物は、お母さんの体質や体調、乳房の状態、赤ちゃんの状態に注意しながらとるようにしましょう。

  • 保育園へ預けるからと、母乳育児を諦めることはありません。保育園での集団生活では、風邪や流行性の病気にかかりやすい環境にありますが、母乳で育った子は、病気になりにくく、かかった場合にも回復力がよく丈夫です。赤ちゃんと一緒にいられる時に3時間授乳を続けましょう。
    預ける前後にはたっぷり母乳を飲ませ、預け先では冷凍母乳かミルクを飲ませてもらいます。仕事を再開して1週間くらいは、日中おっぱいが張るので辛いと思います。乳腺炎になるのを防ぐためにも、3時間ごとに搾乳をしましょう。2~3週間たつと、昼間はそれほど母乳がわいてこなくなります。そうなったら張ってきつい時に搾乳をするようにします。
    1歳を過ぎたら栄養面は離乳食で足りているので、冷凍母乳にしてまで飲ます必要はありませんが、昼休みの5分でもいいので搾っておくと、母乳の分泌が止りにくくなります。

  • "しこり"の全てが"がん"とは限りません。良性のしこりの可能性も高いのです。しかし自己判断は危険です。
    授乳中の場合には、乳栓という詰まりが原因でしこりができることもあります。お近くの相談室にご相談ください。専門医の診察が必要な場合は、乳腺外科を受診して頂く場合があります。

  • 口唇裂と口蓋裂の違いや程度によって赤ちゃんのおっぱいの飲ませ方は、違いがあります。そのため、母乳を飲めない場合や上手に飲めないこともありますし、口唇口蓋裂の赤ちゃんのための人口乳首を利用せざる得ないこともあります。
    しかし、母乳育児をすることは、手術のための感染予防やあごの発達のために、とても有効です。手術が終了するまで、搾乳が主になることもありますが、母乳の出が低下しないように、搾乳法や回数も大切になります。
    また、口蓋裂の赤ちゃんのために口外をふさぐプレートを穴に合わせて作って、母乳を飲ませることが出来ることがあるので、専門の医師の指導を受けあきらめずに、母乳育児を続けられるといいですね。